[優秀賞]
小林由|Neo Retro
茨城県出身
細川貴司ゼミ
2273×1640、1620×1620、1630×1980、1900×1305、1800×1775mm 木枠、天竺綿、木炭、油彩
Neo とは“昔からあったものの新しい形” という意味である。 あらゆるもののデジタル化が進む近年、それに抗うかの ようにレトロブームが起きている。いつの時代でも人は 古臭いものを好みノスタルジーに浸りたがる。それは、 人間味、アナログへの執着と失われたものへの寂寥感から なる無意識の防衛反応としての現実逃避行動であるように 思える。こう聞くと懐古趣味はネガティブな印象を与えるが 私が表現したいのは開き直ったポジティブの意味で ファッション、スタイルとしての“Neo Retro” である。
細川貴司 准教授 評
ストリートダンスや音楽、写真、ファッション、バイクなど、多趣味な側面を持ち合わせる小林さんはとても活発で明るい。学業とアルバイトを両立していても微塵も苦労を漂わせない、その行動力と身体性を伴った感覚は、自ずと絵画に反映されている。
絵画表現は小学校の時から続けるダンス経験が生きている。その身体感覚のリズミカルさや体幹感覚が制作上で一つの指針となって表現されている様だ。日常の中で見つける拾い物や雑誌の切り抜きなど、彼女の持つ感覚のアンテナはフィットするかたちを選び画面に立ち現れる。そこで選ばれる色彩や形のセンスは、しなやかな感覚とチャレンジ精神を持ち合わせている。「外を歩いていても空の色のグラデーションが綺麗とか、雪に映る影が青くて綺麗とか、色に関することで感動することが多い」という彼女の言葉からは、色彩に対する感応性が高い。画面上には軽快な物質性と強度を伴ってきている様が心地良く響く。将来、アーティストを目指す小林さんにはこれからもチャレンジ精神を貫いて欲しい。