歴史遺産学科Department of Historic Heritage

田代絃太|貝製平玉における粗製品の生産と使用に関する考察-北海道における縄文中期~続縄文期の遺跡を事例に-
山形県出身
青野友哉ゼミ

目 次 本研究の目的と方法/研究対象/分析/考察

 貝製平玉の形状はボタン状の形状を持ち、中央部に穿孔が施されていることが特徴的である。穿孔に紐を通しいくつもの製品を連ね、ネックレスやブレスレット、アンクレットのように使用されたことが墓坑の出土状況などからも明らかになっている(図1)。しかし、製品の中には側縁部の研磨が施されていないやや粗雑な印象を受ける製品も出土しており、そのような製品が出土、使用された環境について考察した。研究方法においては側縁部に研磨が施されている製品をA類(精製品)、施されていない製品をB類(粗製品)と分類し(図2?3)
 墓坑やブロックにおける粗製品の含有率の算出、遺跡における貝製平玉の生産状況を明らかにすることで、粗製品の生産?使用状況について明らかにする目的がある。
 研究対象は北海道において貝製平玉の出土が確認された遺跡を研究対象とした。本研究においては船泊遺跡、幣舞遺跡、戸井貝塚、入江貝塚、貝取澗2洞窟遺跡の5カ所の遺跡から出土した製品を分析した。
 分析を行った結果、粗製品が出土したのは船泊遺跡、幣舞遺跡、戸井貝塚、貝取澗2洞窟遺跡となった。特に船泊遺跡においては墓坑において粗製品が多く副葬されており、約68%にも上る墓坑も存在した。しかし粗製品が副葬されていない墓坑も存在し、粗製品の含有率は墓坑によってかなり差があることが明らかになった。他の遺跡においては粗製品の含有率は約17%以下となり、比較的に低い水準にとどまった。また、墓坑における粗製品の含有率においては、子供の墓坑には粗製品が副葬さされにくいという傾向があることが明らかになった。貝製平玉の生産状況においては幣舞遺跡以外の遺跡において確認された。
 以上の分析結果から、北海道において主に使用された貝製平玉は精製品が中心的であり、粗製品の使用?生産は少なく、粗製品における使用?生産は貝製平玉を生産が行われた遺跡において起こりやすい現象であると考察した。そのような状況の中で、粗製品の生産?使用が多く行われた船泊遺跡はきわめて稀有な例であるということができる。また、子供の墓坑では粗製品が副葬されにくいことから、子供には意図的に粗製品の副葬を避けていた可能性が高い。

1. 貝製平玉の副葬状況

2. 貝製平玉における精製品

3. 貝製平玉における粗製品