[優秀賞]
清野駿之介|家具以上建築未満による、住み手が更新していくプロセスの提案
山形県出身
渡部桂ゼミ
2000 x 2000 模型、実寸模型
かつての通りはさまざまなアクティビティが滲み出た「人中心」の場所だった。しかし大型複合施設の登場による都市の空洞化、自動車の増加によって、「街路」で行われてきた活動やコミュニティは喪失しつつある。衰退した通りに住む住人は、高齢化が進み、過去の営みを知る住民は、空き家、空き店舗に新しいものが入ったときの想像ができず、受け入れに不安を感じている。そこで、新築やリノベーションのように大きな更新ではなく、その段階に入る前のきっかけづくりを家具のように扱いやすく、建築よりも簡単に住み手が自由に更新できるフレームと数十パターンの空間構成、プロセスを提案していく。
渡部桂 教授 評
清野君は、「ヤマガタスリートリノベーション」のメンバーとして活動する中で、通りに設置した手作りの椅子が、家具としての機能に加え何かしらの「場の空気」を生み出していることを掴んでいた。そして、家具が機能を持ちながら家具形態の輪郭を超えてゆくと、建築的な表情を持つことに興味の触手が伸びていった。それが「家具以上、建築未満」というコンセプトの1つになった。一方、公の通りに家具を置くことで、そこに賑わいが生まれることも重要視していた。粘り強くフィールドワークを重ね、商店街の方々に耳を傾けてデザインを練っていった。
この作品は、一般に流通している資材と、誰でも組立可能な方法により、安く自在に機能や空間を生み出す仕組みの提案である。家具機能から空間の構成や演出までを範疇とし、かつ建物のエクステリアとインテリアを融合させるまち並みのデザインにまでくい込んだ力作である。何より、現状を変えたいと思う主体が、その実験として始められる手掛かりを提供しようとした。その眼差しがよかった。