坂上由衣|記憶の根源と受け継ぎ方の研究-想続 記憶と思い出の継承方法-
新潟県出身
渡部桂ゼミ
私には、父の実家である祖父母の家で毎年、親戚で集まるという機会がある(図1)。その場所では様々な思い出と経験をしてきた。私たちが生まれる52,3年前から父の兄弟たちでこの家に帰ることをしていた。そしてそれぞれ兄弟に子供が生まれてから子供同士で遊ばせたいと親戚で集まるようになった。そこから血縁の関係もより深まり、自身の人生の中で貴重な体験として残っている(図2)。しかし、この皆が集まる建物が今後も残り続けるかは怪しい。この先も建物を引き継いでいけなくては、親族で集まる重要な場所がなくなってしまうことになるのではないかと考える。場所も大事であるがそこで過ごし、家族に与えられた思い出や学びなど次の世代に継承することが出来なくなってしまう。それは、親族の関係が薄くなってしまうこと、自分自身の人生の中の体験と思い出も薄くなることにもつながる。人生において多くの人と関わり、自分自身の体験や思い出を増やすことは人生を豊かにする。私の親戚との関係をこの先も続けていきたいと思う理由にはそれほどの深い関係性、今までの思い出があるからである。
本研究では自身の親戚との関係を、先の未来に向けてこれから続く人の想いや記憶の継承を「想続」と呼び、皆が集う家が空き家という形になった場合を想定し建物と土地を残しながらも親戚とのつながりや関係を変わることなく存在し続け継承する方法や仕組みを見つけ出すこと、そして自身の親戚との関わり方をうまくしていくためのモデルを見つけていくことを目的とする。
対象地域は新潟県胎内市坪穴とする(図3)。中でも自身の祖父母の家とそれを取り巻く家族、及び親戚の関係を対象とする。一般的に親戚での集まりをどう意識しているのか、「想続」というものをどう仕組化できるのかを研究していく。