[優秀賞]
深瀬奈緒子|Universe in a Pot
宮城県出身
近藤一弥ゼミ
私は現在まで、描線を取捨選択した軌跡と実在すると思われるものの描画と一体化させる手法によって、「視覚」の曖昧さを表現してきました。今回はこの考え方を進めながら、有史以来存在したとされるツボを描写しその歴史を辿ります。
絵画やアニメーションなど二次平面に描かれてきたツボに焦点を当て、ツボを通して事物の認識についての表現を試みました。実在と視覚による認識の曖昧さや予測性を伝えたく思います。
近藤一弥 教授 評
壺というと、すぐに何を思い浮かべるだろうか。 とても高価な骨董品的価値を持つ壺、考古学的な価値のある出土品の壺… いずれにせよ、新しい美的価値の創造に立ち向かおうとする美大生にとっては、壺は少々厄介な代物である。 では、絵画の歴史の中で壺はどのように描かれてきたのだろうか。 二次元の平面の宿命として、その実用性からも、物的価値からも切り離された壺は、その時代時代の美的表現のなかで、一体何を担ってきたのだろうか。 そのような興味から、深瀬さんは、絵画からいくつかの壺を一様に取り出し、彼女独自の方法で並べてみることにした。 そして、彼女はそこに「壺中天=Universe in Pot」を見るという。 なるほど、円形で囲まれ、半透明に可視化されたそれぞれの壺は、時代を超えてつながる、宇宙の入り口のようにも見える。