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未来への卒展
本学には「美術館大学センター」という部門があり、「美術館大学構想」という考え方を育んでいます。簡単に申し上げれば、芸術大学の教育施設全体を、展示施設としても運用できるようにデザインし、大学自体を地域の美術館として活用しようという考え方です。その構想のもと、全ての学科コースの卒業発表を大学施設に集約させるようになってから14年が経ちました。
それからというもの、本学の卒業制作展は単なる一大学の卒業展という枠を超えて、地域のみなさまとの大切な交流の場となり、行事の少ない冬場における芸術祭のような役割にまで成長し、毎年数万人の一般来場者のみなさまに支えていただいております。
新型コロナ感染拡大に揺れる2021年2月、多少の入場規制はございましたが、2020年度卒業?修了制作展を静かに開催させていただきました。約10ヶ月間もの間、外部との接触を制限されていた卒業生たちにとって、一般のお客様からのお声がけがどれほどに嬉しかったことか、大学全体が心からの喜びに満ちた1週間でした。
さて、この世界的なパンデミックによって、大学の通常授業やイベントの様相は一変しました。急ピッチで積極活用されたデジタル技術のおかげで、学生たちは自宅や実家でも授業を受けることが可能になったり、山形ビエンナーレ2020のような大きなアートイベントも、配信型へと形式を換えて実施することができました。
先の2月に開催された卒業制作展におきましても、「変える?買える/卒展をかえる」と題して、会場から学生の動画を配信したり、作品展の一部をサイト上でも観覧できたり、作品をネット販売するという新しい試みにも挑戦し、デジタル通信技術を駆使して、なんとか学生と、ご来場が叶わなかった地域の方々とを繋ぐことができました。そして今、ようやくこの「DOCUMENT 2020」がローンチされることとなり、おかげさまで晴れて2020年度の卒業?修了制作展が一つにまとまりました。
過去も未来も、きっと人々が直接触れ合うことに勝るものはないと感じておりますが、これら新しい技術に支えられた一連の試みも、大切な未来への一歩だと考えております。
本学は今後、今回の卒業制作のみならず、学生の日頃の学習成果やアイデア、研究データや作品画像を、積極的にデジタル上にアーカイブ(保存?活用)していくための準備を整えていきます。なぜなら、学生たちの研究成果や斬新なアイデアを、彼らの卒業と同時に消してしまいたくはないからです。
ますますクリエイティブが世界を創るこの新しい時代に、何年先にでも振り返り、活用し合えるような「創造と想像のライブラリー」があれば、いつかきっと我々を救ってくれるに違いありません。
本学および、卒業生?在学生たちは、このような社会の危機や時代の節目に臆することなく、むしろアート&デザインの原点に回帰し、常にクリエイティブな姿勢で挑む所存です。
今後とも本学へのご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
東北芸術工科大学 学長 中山ダイスケ
2021年3月19日